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義妹から電話があったのは
闘病が始まってから2回目の師走に入ってからでした。

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義実家で義妹長男の結婚が決まったことは耳にしていましたが
その電話は結婚式の出席をお願いする電話でした。

突然の電話に戸惑いましたが
義妹の声は思ったよりハリもあり元気そうでホッとしました。



「唯我独尊ちゃんもコスプレ娘ちゃんも出席してね。」
弾んだ声はともて嬉しそう。

「是非みんなで出席させてもらうわ。」
そう無難に答えながら、わたしの脳はグルグルと言葉を探していました。


”元気そうね”とか”お大事にね”とかそんな白々しい言葉じゃなくて
何かもっと気の利いた言葉はないかとありったけの言葉を総動員したのだけれど
残念ながら何ひとつ見つけることはできませんでした。
なんて役立たずな脳ミソなんでしょう。

せめて無用心な発言をするまいと
結局は何を話したのかはほとんど覚えていません。


「それじゃ、結婚式でね。楽しみにしてます。」
最後にそう言って受話器を切ったのは覚えています。


春の結婚式には顔を見られる。
お見舞いを躊躇して後ろめたさを感じていた私は
結婚式というよりも義妹との再会を心待ちにしていました。

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お正月には家族4人で義実家に顔をだしました。
毎年義妹2人の家族たち一同と顔を合わせていましたが
がんを告知されてからは賑やかに集まることはなくなっていました。
下の義妹の子どもたちが受験と重なってもいました。

お正月のご馳走も花もなく静かなお正月でした。
カレンダーが新しいものに変えられ、
鏡餅が飾られているくらい。
それでも娘たちにはお年玉を用意してくれていました。


明るい話題をと甥っ子の結婚式の話をしてみました。
お嫁さんは会社の同僚で、美人でしっかりとしたお嬢さん。
義父母は何度も病室で会っているようでした。

義妹は抗がん剤投与のため入退院を何度か繰り返していました。
今は家で療養中でお正月は義妹夫が一緒です。
義妹夫が仕事の時は義父母が一緒にいるようにしていました。

「S美ちゃんも体調整えて出席しないとね。」
迂闊なわたしの一言に義母の顔は一瞬にして曇りました。
「まぁねぇ、、、
車椅子でも出席するからって言ってるけど。」

そのまま誰も口を聞かないまま
賑やかなお正月番組が流れるTVを静かに眺めていました。


思ったよりも義妹は良くないのかも知れない。
帰りの車でB型夫にさり気なく声をかけてみます。
「S美ちゃんのお見舞い行ってみたら?」
予想通りに言葉が返ってきました。
「そうだな、そのうちな。」

お見舞いへ行ったとして
B型夫もなんと声をかけたらいいのかわからないのでしょう。
そして痩せた妹の姿を見てきっと泣くでしょう。
わたしもそれ以上言いませんでした。

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